NAOMI By Junichiro Tanizaki The charm of Naomi stands out more by abnormal sexual de
谷崎潤一郎の”痴人の愛”
私が、谷崎潤一郎をリスペクトする、きっかけとなった本です。
はっきり言って今読んでも、とても古い時代の話とは思えない。
それとこのお話し、私にとっては懐かしい大森、大井町界隈が舞台となっており、学生時代をそこで過ごした私にとっては、今そこにナオミと譲治さんが二人で歩いているんじゃないかと妄想したものです。
英語のタイトルは女主人公のナオミの名前がそのまま利用され、何と無くここで日米間の感覚の違いも感じます。
ナオミをタイトルにしたのは、おそらくナオミが他の女性の追随を許さない、完璧な魔性の女をイメージされていることに起因する様に思います。
確かに過去には、日本でもナオミという名前が妖婦の代名詞となるほどだったのでわかる気もしますが。
ちなみに私の知る限りナオミさんという人は確かに美人が多い。
一方、谷崎大先生は、”痴人” つまり愚か者として、ナオミの方ではなく、譲治さんのことを指しています。まあ譲治さんは谷崎大先生の生き写しみたいなもんなんでしょうが。
要するにこの物語の主題は、ナオミではなく、あくまで翻弄された側に内在している異常な性癖の方だと主張しているわけです。
ナオミは容姿端麗の美人だったんだろうとは、私も思いますが、正直なところあの物語は、譲治さんの異常性癖を抜きには語られないはず。
もう譲治さん、行っちゃってますから。
骨抜きにされてもそれでも幸せと感じるならまさに本望でしょうね。
仮に譲治さんが、とってもノーマルな方だったら、ナオミも女王様になる事はなかっただろうし、そもそも陳腐な恋愛小説にしかならなかったでしょう。
ナオミをあれだけの高みに登らせたのは、他ならぬ譲治さんというか谷崎先生自身の異常なまでの性癖パワーです。
WHOによる診断基準ICD-10の精神科的診断でいうと、
フェティシズム、マゾヒズムなどを含む、性嗜好障害 F65
谷崎大先生ご自身が足フェチだったというのは結構有名らしい。
それに、谷崎大先生の著書の多くは、何かしらの性嗜好障害、もしくは性の発達と方向付けに関連した心理行動の障害的要素が必ず含まれているところがとても面白い。
”刺青”や”春琴抄”におけるSadism(サディズム)
”卍”のhomosexul,bisexual (ホモセクシャル、バイセクシャル)
”鍵”のExhibitionism, Voyeurism (露出症、窃視症)
など、もう性嗜好、性心理行動の障害のオンパレードだ。
噂によると、ノーベル文学賞の選考委員が最後まで川端康成派と谷崎派で争ったという。
私にとっては、絶対、谷崎潤一郎がノーベル賞だ!
芥川や川端が、自ら幕を閉じたのに対して、谷崎は最後まで自分の性壁を貫き、長く太い作家活動をし、その生と性の貪欲さに逞しささえ感じます。
ナオミが自分のうなじを譲治さんにカミソリで剃らせるときのあのクライマックスが、英語でどう表現されているのか面白そうで、いつか買おうと思いながらやっと最近アマゾンで洋書をゲット。
まだそのシーンまで読めてませんが、ゾクゾクします。